デジタルツインを支える技術と活用事例を徹底解説
現実空間と同じ環境を再現できるデジタルツインは、その精度の高さからすでに多くの企業や行政に活用されています。デジタルツインの技術は知っているものの、具体的にどのような課題を解決できるのか、確認したうえで導入を検討したいですよね。
本記事では、デジタルツインを支える技術と、実際の活用事例を紹介します。
目次[非表示]
- 1.1.デジタルツインに活用される技術
- 2.2.製造業にデジタルツインを導入するメリット
- 3.3.デジタルツインの活用事例
- 3.1.①製造業:富士通
- 3.2.②製造業:ダイキン工業
- 3.3.③建設業:コマツ
- 3.4.④都市開発:国土交通省
- 3.5.⑤災害対策:NTTコミュニケーションズ
- 4.まとめ
1.デジタルツインに活用される技術
高精度なデジタルツインの実現には、主に5つの技術が活用されています。ここでは、デジタルツインを支えている、それぞれのテクノロジーを解説します。
①IoT
IoTはさまざまなモノをインターネットにつなげて、相互通信を行う技術のことで、現実空間の環境やモノのデータを収集します。
デジタルツインでは、精密な仮想空間を実現するために、現実空間の膨大なデータを収集する必要があります。IoTによる情報の収集技術は、デジタルツインの実現に欠かせないものです。
②5G
5Gは、2020年からサービスが開始された第五世代移動通信システムのことです。前世代と比べて、IoTで収集した大容量のデータを高速、かつ低遅延に伝送することができるため、リアルタイムでデータを収集し、デジタルツインを最新の状態に保ったり、遠隔地でのリモートモニタリングや遠隔操作にも役立ちます。
③AI
IoTで収集した膨大なデータの分析を効率的に進めるために、AIを活用します。
デジタルツイン上では、仮想空間内に実現したデータや対象物を高精度に分析しなければなりません。膨大なデータを機械学習、あるいは深層学習させることで、高度かつ高精度な分析・予測を可能としています。
④AR/VR
AR(Augmented Reality:拡張現実)とVR(Virtual Reality:仮想現実)もデジタルツインには欠かせない技術です。ARやVRを活用すると、仮想空間内に再現したモノを視覚的、あるいは聴覚的にも、現実味を帯びて体感できるようになるため、現実空間に対する、より正確なフィードバックに期待が寄せられています。
⑤CAE
CAE(Computer Aided Engineering)は、仮想空間内でシミュレーションを実行するのに必要な技術です。現実空間で実際に試作を完成させるのに比べて、大幅なコスト削減に寄与します。
IoTが普及したことで、実態に即した高度なデータを収集できるようになり、デジタルツインにおいては今やCAEによるシミュレーションが必要不可欠です。
2.製造業にデジタルツインを導入するメリット
このように、デジタルツインはさまざまな技術を活用、連携させることで実現しています。
製造業にデジタルツインを取り入れることで得られるメリットは、以下の通りです。
▼デジタルツインを製造業に導入するメリット
- コストの削減
- 品質の向上
- 予知保全
- アフターサービスの向上
- 遠隔の作業支援や技術伝承
製造業では、製品開発において、何度も試作を繰り返す必要があり、現実空間ではそのたびに工数がかかるという懸念がありました。デジタルツインでは、CAEの技術によって仮想空間内で事前にシミュレーションを重ねられるため、大幅にコストを削減することができます。
また、遠隔地からの作業指示が実現することで、現場に出向く必要もありません。作業指示の内容を記録、さらに蓄積していくと、熟練者の技術伝承にもつながります。
3.デジタルツインの活用事例
ここからは、デジタルツインを活用した、より具体的な事例を紹介します。製造業から都市開発まで、すでに導入している企業や行政を例に、どのような課題の解決に用いているのか、ぜひ確認してみてください。
①製造業:富士通
富士通では、複数の異なるシステムで管理していた膨大なデータの情報がバラバラで、整理されていないという課題がありました。
そこで、デジタルツインによって仮想空間内に工場の全体像から電力消費量の監視まで、すべて可視化できる“インテリジェントダッシュボード”を開発しました。これにより、生産・品質情報の管理やエネルギー監視などを実現し、経営改善や生産性の向上に活用できています。
②製造業:ダイキン工業
ダイキン工業には、空調製品を生産するなかで、製造設備の異常や作業の遅れといった問題点がありました。
デジタルツインの導入で、仮想空間内に製造設備の組み立て作業を再現したことで、トラブルを予測して課題の早期解決を可能としました。
③建設業:コマツ
コマツでは、IoTとアプリケーションを駆使して、建設現場における施工の全工程をデジタルでつなげました。仮想空間内の現場と、ドローンで撮影した実際の現場を同期させることで、施工の最適化を実現しています。
デジタルツインの現場では、施工状況の確認や事故リスクの予測なども、リアルタイムで確認できるようです。
④都市開発:国土交通省
国土交通省が中心となり、2020年4月に全国50都市の3Dデジタルツインを整備するために、“PLATEAU(プラトー)”を公開しました。PLATEAUでは、国内の3D都市モデルを、デジタルツインを通して誰もが利用することができます。
PLATEAUを活用した事例としては、東京海上日動火災保険と応用地質が、台風や集中豪雨による浸水被害を可視化するべく、浸水エリア予測と実測データを組み合わせた“リアルタイム浸水情報”の共同開発が挙げられます。
⑤災害対策:NTTコミュニケーションズ
NTTコミュニケーションは、“参加型デジタルツインシミュレーションプラットフォーム”の社会実装に取り組んでいます。その第一弾として、東京理科大学理工学部土木工学科水利研究室に協力を得て、デジタルツインを活用した“デジタル防災訓練”を実施しています。
デジタル防災訓練は、仮想空間で再現した街に、アバターとして市民が参加して、水害が発生する前後にとる行動をシミュレーションし、行動データを分析する実験です。自然災害によるリスクを可視化して、市民の安全を確保するための施策に役立てられています。
まとめ
この記事では、デジタルツインについて以下を解説しました。
- デジタルツインに活用される技術
- 製造業にデジタルツインを導入するメリット
- デジタルツインの活用事例
デジタルツインは、IoTやCAEなどの技術を組み合わせることで実現する、高度なシミュレーションを可能とする技術です。コストの削減だけでなく、品質の向上や遠隔地からの支援も可能であることから、製造業を中心に導入が拡大しています。
ほかにも、建設業や行政にもデジタルツインが活用されており、今後も活用の幅が広がることが予想できます。
なお、デジタルツインを企業で導入する場合は、データを管理するためのサーバーが必要です。自社で管理する手間を省くには、データセンターの利用がおすすめです。
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