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サーバーの運用で利用されるリアドア空調とは? 2つのシステムとそれぞれのメリット・デメリットを解説


データセンターや企業でサーバーを運用する際に、空調をどのように管理するかは非常に重要なポイントです。サーバールームの空調設備にはさまざまな種類がありますが、特に排熱量の多い高負荷サーバーに対しては、リアドア空調が採用されるケースが増えてきています。

本記事では、リアドア空調の特徴と代表的な2つのシステム、そしてそれぞれのメリット・デメリットを解説していきます。



1.リアドア空調とは

リアドア空調とは、サーバーが配置されているラックの背面に、熱交換器が内蔵された扉を組み込んだ空調機のことです。RDHx(Rear Door Heat Exchanger:リア・ドア・ヒート・エクスチェンジャー)と呼称される場合もあります。

サーバーから発生した熱を瞬時に冷却し、外部のマシン室には冷風を吹き出す仕組みです。HPC(High Performance Computing:ハイ・パフォーマンス・コンピューティング)やスーパーコンピューターなど、ほかの冷却方式では対応できない高発熱のサーバーで使用されます。

冷却効果に優れるリアドア空調ですが、冗長性の担保が難しいという弱点がありました。しかし最近では冗長性対策の施された製品も登場しているため、さまざまな場面での利用が期待されています。



2.リアドア空調の種類

リアドア空調は、内蔵される機能の違いによって2つの種類に分けられます。


①パッシブ型リアドア空調(PRDHx: Passive RDHx)

パッシブ型リアドア空調は、熱交換器のみで構成されたリアドア空調です。空調自体にファンが搭載されていないため、サーバー側の冷却ファンが作り出す気流を受けて、熱交換器で受動的に空気の冷却を行います。


②アクティブ型リアドア空調(ARDHx: Active RDHx)

対して、熱交換器だけではなくファンも内蔵した扉で構成された種類が、アクティブ型リアドア空調です。

サーバー側のファンが排熱する際、気流が熱交換器を通るときにどうしても空気抵抗が発生してしまいます。アクティブ型リアドア空調は、内蔵のファンでその空気抵抗分の排熱を補助できるため、パッシブ型よりも効果的な熱交換を実現できます。



3.パッシブ型リアドア空調のメリット・デメリット

パッシブ型リアドア空調には、どのようなメリット・デメリットがあるのでしょうか。以下に、表形式でパッシブ型リアドア空調の特徴を整理しました。

▼パッシブ型リアドア空調のメリット・デメリット

メリット/デメリット

説明

メリット

  • リアドア部分にファンが搭載されていないため、アクティブ型よりも消費電力が低く、PUE効率が高い
  • ファンがないため薄型になるうえ、稼働によるノイズも出ない
  • 構成する部品が少ない分、障害の発生する確率が低く、コストも抑えられる

デメリット

  • 冷水の流量を自動で制御する機能が備わっていないモデルだと、過剰にマシン室を冷やしてしまう場合がある
  • 冷媒として露点温度以下の冷水を利用していると、結露が発生しやすい
  • サーバーの負荷が大きくなると空気抵抗も増すため、サーバー側のファンに負担がかかり、結果としてシステム全体の消費電力量が、アクティブ型を採用する場合よりも大きくなってしまう


上記の表内で登場するPUE(Power Usage Effectiveness:パワー・ユーセージ・エフェクティヴネス)は、電力をどれだけ効率よく使用できているかの指標です。つまりパッシブ型は、単体で比較した場合はアクティブ型よりも電力効率が高いと言えます。一方で、サーバーにかかる負荷が増えて必要となるエネルギーが一定以上になると、システム全体の消費電力がアクティブ型より大きくなる傾向にあります。

まとめると、コストや必要なスペースを抑えつつ、ある程度の負荷がかかるサーバーの冷却を実施するなら、パッシブ型が最適です。



4.アクティブ型リアドア空調のメリット・デメリット

片や、アクティブ型リアドア空調には以下のようなメリット・デメリットが存在しています。

▼アクティブ型リアドア空調のメリット・デメリット

メリット/
デメリット

説明

メリット

  • ファンを内蔵しているため、パッシブ型と比較してより発熱の大きいサーバーにも対応できる
  • 単体のPUE効率は落ちるものの、ラックあたりに必要なエネルギーが一定を超えたシステムでは、全体の消費電力をパッシブ型よりも軽減できる
  • 熱交換に利用する冷水の温度が比較的高くても問題ないため、フリークーリングシステムとの相性がよい

デメリット

  • ファンが搭載された分、単体のPUE効率はパッシブ型より劣る
  • 構成部品が多くなるため、障害の発生確率が高くなり、コストもかさむ
  • パッシブ型と同様に、利用するモデルによってはマシン室の温度を下げ過ぎてしまうおそれがあり、露点温度以下の冷水を使うと結露の発生するリスクが高くなる


総じて、ファンが増えた分コストや故障の確率が上がるものの、必要なエネルギーが多く発熱の大きいサーバーなら、効率よく冷却を実施できると言えます。

また、フリークーリングシステムと併用して省エネルギー化を図りたい場合も、アクティブ型の採用がおすすめです。フリークーリングシステムとは、外気温度の低い時期に、冷却塔のみで空調用の冷水を製造・供給するシステムのことです。冷凍機を別に準備する必要がないため、省エネルギー化に大きく貢献することができます。

リアドア空調のなかでも特にアクティブ型は、ほかの空調システムと比較して熱交換に用いる冷水の温度が、ある程度高くても問題ないという特徴があります。そのため、過剰に冷水の温度を下げる必要がなく、フリークーリングシステムの製造する冷水でサーバーを十分に冷却することが可能です。



まとめ

この記事では、リアドア空調について以下を解説しました。

  • リアドア空調の概要
  • リアドア空調の種類
  • パッシブ型リアドア空調のメリット・デメリット
  • アクティブ型リアドア空調のメリット・デメリット

2種類存在するリアドア空調のどちらを選択すべきかは、サーバーのスペックや発熱量、またマシン室の条件によってケースバイケースです。リアドア空調の利用を考えられている担当者様は、その点を慎重に検討することをおすすめします。

リアドア空調についてより詳しく知りたいとお考えの方は、ぜひMCデジタル・リアリティまでお問い合わせください。

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